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ストライキ期間中の賃金削減の対象となる部分の存否及びその部分と賃金削減の対象とならない部分の区別は,当該労働協約等の定め又は労働慣行の趣旨に照らし個別的に判断するのを相当とし,上告会社の長崎造船所においては,昭和44年11月以降も本件家族手当の削減が労働慣行として成立していると判断できることは前述したとおりであるから,いわゆる抽象的一般的賃金二分論を前提とする被上告人らの主張は,その前提を欠き,失当である。
所論引用の判例(最高裁昭和37年倦1452号同40年2月5日第2小法廷判決,民集19巻1号52頁)は事案を異にし,本件に適切でない。」(Mb重工業長崎造船所事件・最高2小判昭56.9.18民集35巻6号1028頁)と判示し,当初の最高裁判例を変更しました。
そして,ストライキの場合に家族手当をカットすることができる旨の就業規則規定にもとづき約20年間実施され,賃金規則からその規定が削除されてから引き続き異議なく賃金カットが行われてきたというような場合においては,家族手当であっても賃金カットの対象となると判断しています。
したがって,賃金カットの対象となる賃金は,上記Mb重工業長崎造船所事件の最高裁判例に従えば,それが欠勤であろうとストライキであろうと,要するに労働協約,就業規則,労働契約ないし従来の労働慣行において,どの賃金項目について賃金カットの対象としているのかによって決まってくるということになります。
労働基準法では,賃金カットの方法についてとくに制限規定を設けていません。
したがって,企業はどのような方法によって賃金をカットしても差し支えないのかというと,そうではありません。
以下,この点についてみていきましょう。
分単位,時間単位の賃金カットの方法遅刻や早退の場合には,5分とか30分といった分単位での賃金カットもあるでしょうし,また1時間とか2時間といった時間単位での賃金カットもあるでしょう。
この場合,ノーワーク・ノーペイの原則により,5分の遅刻や早退に対して5分に相当する賃金をカットすることは差し支えありませんし,また1時間の遅刻や早退に対して1時間に相当する賃金をカットすることも差し支えありません。
また,「切捨て計算方式」によって,賃金カットする切捨て時間を決めておき,それに達しない時間は,切り捨て賃金カットしないというのであればノーワーク・ノーペイの原則からしても社員には有利であり差し支えありません。
たとえば,15分未満の遅刻は切り捨て賃金カットしない,15分以上30分未満の遅刻は15分とするといった具合の場合です。
しかし,15分未満の遅刻は15分の遅刻とし,15分ぶんに相当する賃金をカットしたり,15分以上30分未満の遅刻は30分の遅刻とし,30分ぶんに相当する賃金をカットしたりする「切上げ計算方式」による賃金カットの方法は,いくら計算事務が煩雑で面倒だからといっても,社員が労働したことによって当然取得(請求)できる権利のある賃金を支払わないという結果となり,賃金の全額払の原則を定めた労働基準法24条1項に違反するということになります。
ただし,15分の遅刻が他の社員の共同作業に支障をきたし,ひいては企業の業務を停滞させるという結果を招くような場合には,15分の遅刻についてさらに減給の制裁ということで,懲戒処分として取扱うのであれば(労働基準法91条の減給の制裁規定の範囲内であることが必要),30分ぶんの賃金カット(15分は遅刻,15分は減給の制裁)を行うことも賃金の全額払の原則には違反しないということになります。
また,賃金カットする切上げ時間と切捨て時間を定めておき,両者を併用する「切上げ切捨て方式」による賃金カットの方法は,社員に有利な場合もあれば不利な場合もあり,それによって相殺されるので,一見賃金の全額払の原則には違反しないように思われますが,常に相殺されるとは限らず,月間統計では社員に不利な場合も生じてくることもあるでしょうから,その点で問題のある賃金カットの方法であるといえます。
日単位の賃金カットの方法欠勤などの1日単位の不就労部分に対する賃金カットの方法については,月によって所定労働日数が違うので,これを年間の平均所定労働日数分の1で調整して賃金をカットするという方法も考えられますが,この方法をとった場合には,ノーワーク・ノーペイの原則を超え,賃金の全額払の原則を定めた労働基準法24条1項に違反することもありますので注意しなければなりません。
すなわち,平均所定労働日数を25日とした場合には,1ヶ月が25日以下のときは数%程度で賃金カット分を免除することになりますから(1ヶ月24日とすれば,1−(24日÷25日)=4%),ノーワーク・ノーペイの原則の範囲内であり差し支えありませんが,1ヶ月が25日を超えて26日とか27日になったときには,逆に数%程度でノーワーク・ノーペイの原則を超えて賃金カットが行われることになり,賃金の全額払の原則を定めた労働基準法24条1項に違反するということになるからです。
したがって,この方法による場合には,平均所定労働日数が各月の実際の所定労働日数を常に上回っていなければならないということになります。
その意味で,所定労働日数分の1で賃金カットするという方法がノーワーク・ノーペイの原則からすれば,最も妥当な方法であるということができます。
欠勤カットとストカットの違いストライキも労働力の提供をしないという点では欠勤と同様であり,ノーワーク・ノーペイの原則も欠勤と同様に適用され,ストライキによる不就労部分の賃金をカットすることも差し支えないことはすでに述べたとおりですが,ストライキは憲法28条の争議権の行使として組合員の要求を企業に承認させるため,不就労による賃金カットにも耐えながら,不就労によって企業経営に支障をきたすものであって,労働契約上たんなる契約違反(債務不履行)としての欠勤とはその性質が異なるものですから,欠勤の場合の賃金カットとストライキの場合の賃金カットの態様が異なっても差し支えありません。
この点について,裁判例も賃金は「法令,雇用契約,労働協約,就業規則,′慣行等において特段の根拠のない限り,所定の就業時間中現実に就労した時間に対応して具体的請求権が発生するのであり,通常の欠勤にせよ争議行為としての不就労にせよ,現実に就労しなかった時間に対応する賃金請求権は発生しないのが原則である。
給与規定14条において,欠勤の場合は1日につき右基本金額の100分の1,遅刻,早退の場合は1回につき,300分の1を控除する旨の規定がある」が,「欠勤,遅刻,早退の用語は一般に,従業員が雇用契約上就労義務を負っているのにかかわらず就労しない場合に用いるものであって,従業員の争議権の行使としてストライキが行われ,このため雇用契約上の就労義務が一時的に免除され使用者の労務指揮権も排除されるに至る場合の不就労は,右概念にあてはまらないと見るべきである。
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